私、海が見たい

再び車は、海岸線に出てきた。

海が広がっている。

海を見て、少し元気付いたのか、
気を取り直して、明るい声で、


「お母さんとはいつ頃から?」


「俺が大学生の頃。
 少しの間だったけどね。
 一年半くらいかな。
 それだけだよ、お母さんとは。

 お母さんはね、短大だったから、
 もう田舎に帰っていて、
 最初は遠距離恋愛だったんだ。

 だから、ここの夏祭りの時なんか俺、
 仮病を使って帰ってきたりしていたんだ」


そう言って中村は、
懐かしそうに遠くを見つめた。

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