私、海が見たい
~~~~ 告白 ~~~~
--- 29年前。商店街 -----
正月三日、夜11時を回っている。
もう、ほとんどの店が、
シャッターを下ろしていた。
飲食店の灯りが、所々あるだけである。
同窓会が終わり、店の前で皆が、
盛り上がっている。
「おーい。どっか行こ」「次、行こうぜ」
「どっか行こ」「どこ行く?」
酒の勢いもあってか、大声で話し合っている
中村も、精一杯のおしゃれして、スーツ姿。
中村は着物姿の恵子のほうを見ている。
恵子は女友達5人と、輪になって話していた
そのうち、
「私、もう帰るわ」
恵子が友達にそう言い、輪から離れた。
「えっ、二次会、行かないの?」
「ちょっと、飲み過ぎちゃった」
すると、すかさず中村が近づき、
「じゃあ、俺、送って行ったるわ」
と、女友達に言った。
中村の、どこからそんな勇気が出て来たかは
知らないが、今までにない行動だった。
「じゃ、お願いね」
「恵ちゃん、またねー」
そう言って、友達は、恵子に手を振る。
「またねー。バイバイ」
恵子も友達に手を振った。