私、海が見たい

教室の後ろでは、女友達が4人集まって、
携帯を出して、見せあって話をしている。

入り口から入ってきた綾を見つけた一人が


「綾ーっ、綾っ。
 おっはよーう。こっち、こっち」


呼ばれた綾がやって来て、輪の中に加わる。


「何っ。何っ」


「ほうら、これっ」


後ろに隠していた携帯電話を、綾に見せた。


「あっ、いいなあ、
 新しいやつじゃない」


「へへっ、買ってもらったんだー」


もう一人の友達も、新しい携帯を、
綾に見せた。


「私のは、コレっ」


「あー、これっ。
 私も欲しいと、思ってたんだぁ」


携帯の話が続き、
楽しそうな笑い声が、何度もあがった。

綾はその輪の中で、羨ましく思いながらも、
微笑んで、皆の話を聞いているだけだった。

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