私、海が見たい
中村が下宿に帰ると、ハガキがきていた。
恵子からだった。
差出人を見なくても、その字で、
恵子からと、すぐにわかった。
「元気ですか。
何の連絡も無いので、
手紙、書いちゃいました。
きっと、バスケットが、
忙しいのでしょうね。
私は、元気です。
母のもとで、家事手伝いをしていますが、
もう暇で暇で。
時間が多いと、つまらないことばかり、
考えてしまいます。
よかったら、電話してください。
手紙でもいいです。
元気な声を、聞かせてください」
中村は、ハガキを読むと、
机の上にボンと置き、ベッドに寝転んだ。
頭の後ろで手を組み、宙を見つめる中村。
頭の中は、今日の試合のことで一杯だった。
反省点は、いくらでもあった。
そして、恵子の手紙は、いつのまにか、
中村の頭から消えていた。