私、海が見たい
・・・・ 邂逅 ・・・・
~~~~ 邂逅 ~~~~
--- 23年前。1月26日 ---
午後2時。
喫茶店のドアが開く。
カウベルの音が、カランカランと響いた。
中村が、入口で立ち止まり、中を見渡す。
奥の席に、本を読んでいる恵子がいた。
恵子のところへ行くと、
恵子が気付き、顔を上げた。
中村の知っている、笑顔だった。
付き合っている最後の頃には、
見られなかった笑顔だった。
中村もつられて、微笑み返す。
「待った?」
「ううん。今来たところ」
中村は恵子の横に、腰を下ろした。
対面に座る気には、ならなかった。
少しでも、恵子に近づきたかったのだ。
「でも今、本、読んでたんじゃあ・・」
「ああこれ?、今開けたところなのよ」
さりげなく言って、
恵子はバッグの中に本をしまった。
しかし、その左手薬指に、ゴールドの指輪が
光っているのを、中村は見逃さなかった。