私、海が見たい

久しぶりに聞く、恵子の声である。

中村は、大きく脈打つ鼓動を押えながら、
冷静に話そうとした。


「ああ、元気やで。
 やっぱり君やったんか。
 ポップビーンと言う名前を見たときは、
 誰やろうと思ったけど」

恵子の声は、弾んでいた。

「私、手紙でその名前、
 使ったこと無かったかしら」


「ああ、初めてやで、その名前は。
 でも、手紙の字を見て、
 もしやと思ったんや。

 しっかし、思い当たる人が
 一人しかいないってのも、
 寂しい話やなあ」


しかし、この話には乗らず、恵子は明るく、


「一度、会えない?」


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