勇者は僧侶のなんなのさ
しかしシサは反応を示さない。


「ん、行こうよ?」


シサの肩を揺らす。


しかし目を開かない。


「まさか、寝たの?」


聞いてみたが、帰ってきたのは安らかな寝息だった。


どうやら本格的に寝付いたらしい。


この短時間で寝付くとは、流石と言うべきか。


しかし感心している場合ではない。


「慎重に…………。慎重に…………」


シサに抱かれている左腕をゆっくりと引き抜いた。


最後に鼻にかかった声が聞こえたが、シサから目を逸らして乗り切る。


次は問題の足。


がっちりと捕まっていてなかなか引きはがせそうにない。


なにより、場所が場所だけにあまり刺激を与えたくない。


それがお互いのためだ。


というか、ギルドのためでもある。


良くも悪くもシサは男ウケが良いから、変な噂が立てばギルド内がギクシャクしそうだ。


それもこれも、シサが皆にニコリと笑顔を向けて挨拶をし、良い子ちゃんを演じているから悪い。


「僕にもそれくらいしてくれれば良いのに」


つぶやいたら、シサはいきなり寝返りを打った。


抱き着かれているのにそんな事をされたら、体勢が崩れてしまう。
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