勇者は僧侶のなんなのさ
「うっわ」


慌ててシサの枕元に手を付く。


なんとか体勢を立て直し、シサにぶつからなくてすんだようだ。


「ふー」と一息ついて安心してから、今の状況を冷静に考えてみる。


シサは仰向けで大の字。


その両足の、見方によってはいやらしい場所に膝を付いている。


そして、枕元には両の手。


「まるで押し倒したみたい」


自分で言って、自分で苦笑した。


シサにそんな事をする勇気があるのなら、今頃国王にも世界一のアサシンにもなれている。


というか、シサに限らず、他の女の子にでもそんなこと出来るはずがない、チキンハート。


「って、こんなことしている場合じゃないや」


足を解放されたのだから、立ち上がれる。


「入るぞ、フェイ。今日はミュの所へ…………」


ドアが開く音とともに聞こえてきた女性の声。


その声は途中で途切れた。


「…………邪魔だったかな?」


「やややや! 違うんだよ、ランス! これはいろいろな事情があるんだ」


さっと立ち上がり、ドアを開けたまま固まっているランスに弁解する。


ランスの顔が赤くなっているが、これは照れや羞恥ではなく、憤怒だ。
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