勇者は僧侶のなんなのさ
ふと視線を感じてランスの方を向くと、ランスが焦点の定まらない目で見ていた。


「どうしたの?」


「いや、大した事はない。だがな、何となく違和感を感じる」


最初はまたランスがいい加減な事を言っているのかと思ったが、冷静に周囲の気配へ集中すると、確かに異質な物を感じる。


「フェイ、気をつけろ」


ランスが油断無くナイフを出しながら言った。


「了解。ランスも怪我しないようにね」


同じくナイフを取り出して答える。


ランスの細長くてオシャレなナイフとは違い、刃渡りがランスの顔くらいある、無骨なナイフ。


使い慣れた武器の一つで、常に背中のホルダーに納められている。


機動性も破壊力も十分な頼れる相棒だ。


「私はこのギルドの部隊長であるランスだ。既にこちらはお前の気配を察知している。出て来なくばこちらから打って出るぞ。おとなしく降伏しろ」


いつもとは違って凛ととして毅然な態度を取るランス。


いつも半笑いで、良く分からない笑いを取りに来るランスと同一人物とは思えない。


「伊達にギルド長やってない」と、少しだけ感心した。


後は、普段からこう言う言動で生活を行い、無駄なトラブルを減らしてくれることを願う。
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