勇者は僧侶のなんなのさ
後は逃げるだけという算段になり、この読みは当たっているように考えられた。


しかし、ならば何故すぐに逃げようとしないのか。


のんびりと話す程の時間があるとは思えないし、話せば話すほどヒカルは不利になる。


それでもここで時間を取る理由が間違いなくあるのだ。


「あ」


分かった。


もし考えが当たっているのなら、シサ達が危険だ。


「ランス! この場は任せた!」


ナイフを納めながら回れ右をして、ドアへ向かって走り出す。


「どこへ行こうと言うのかね?」


「帰る! あと、そのギャグは使うな! ヒカルを逃がすなよ!」


ランスにはそれだけ言い残し、部屋を出て行った。


階段を下りるのは時間がかかるので、下に誰もいないことを確認してから飛び降りた。


着地をすると足から体全体に痺れが走ったが、構わずに走ってギルドの玄関を出る。


ギルドから家までは近いという事もあり、最大限の速さで家に帰ると時間は5分もかからない。


玄関に辿り着くと、ナイフを抜きながらそのままの勢いで扉を開く。


「…………正解」


中には油断無く杖を構えるシサと、シサに向けてナイフを向けるレンの姿があった。
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