勇者は僧侶のなんなのさ
「何をしているんですか?」


怒りで耳の奥が焼けるようだが、あえて声を押し殺す。


レンはこの怒りを感じ取ったのか、ナイフをこちらへ向けた。


ナイフでやりあって負けるはずはないが、相手の様子を伺う。


仕掛けてきたら半殺し、逃げ出したら拘束して尋問。


どちらにしてもシサとミュにナイフを向けた以上、許す訳にはいかない。


「ナイフを捨てなさい、貴方に勝ち目は無い」


ジリッとにじり寄ると、レンも少し近寄ってきた。


「お前の目、それはなんだ」


レンが聞いてきたが、ただ気を逸らすためだけの陳腐な会話。


無視をしてまた一歩レンににじり寄る。


「フェイ、本当にいつもと違う」


シサまでそんな事を言い出すが、今はそんな事に気を向けている暇はない。


ナイフを前に出し、レンとの距離感をはかる。


レンはポケットに手を突っ込み、ボールのような物を地面にたたき付けた。


ボールが地面にたたき付けられる様子が、何故かコマ送りで見える。


そのボールを捕まえようと手を伸ばすが、その腕すらコマ送りに見えた。


ボールは地面にたたき付けられると割れ、中から煙が出てくる。
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