勇者は僧侶のなんなのさ
恐らく視覚を奪う為の物なのだろうが、不思議と煙り越しに相手が見える。


はっきりとではないが、輪郭や動きは手に取るように分かった。


ナイフを構えたまま、レンに襲い掛かる。


レンが向かい討とうとすればそのまま討ち取れたのだが、レンは背中を向けて逃げ出した。


レンの動きは速いが、それでも追いつき追い越せるレベル。


しかし何かがばらまかれて、それに気を取られてしまった。


ばらまかれた何かは地面につくと、大きな音と閃光を撒き散らす。


撹乱するための道具のようで、これではレンを追い掛けることは出来ない。


「上手くやられちゃったな、ツイてない」


爆音と閃光で誰にも聞こえるはずがないが、つぶやいた。


それにしても先程の感覚はかなり奇妙で、今までに体感したことがない。


まるで全ての世界が、時計の秒針のようにカチリカチリと動いていた。


それだけならまだしも自分の体もその動きに支配されていて、思うように動かせなかったのが困る。


あの中で自分一人だけが悠々と動く事が出来るのなら、今回のようにレンを取り逃がすこともなくなるだろうに。


だいたい何だったのだろうかということも分からない。
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