勇者は僧侶のなんなのさ
「へ?」


素っ頓狂な声を出すランス。


「だって、ほら。今ランスのお尻を支えているんだから、スカートめくれないでしょ」


なんせ動けないランスを背負っているのだから、ずり落ちないようにするのは当然の事である。


「そんな公然と卑猥な事実を認めるとは、堕ちたものだなフェイよ」


「堕ちたも何も、僕は貧乳そんなに好きじゃないから、安心して良いよ」


「…………」


黙り込んだランス、背負っているから表情が見えずに何を考えているのか分からない。


間違いなく言える事は空気が死んだ事だけである。


「ラ、ランス?」


「ふっふっふっふっ」


急に不気味な声を出すランス、それに呼応するかの如く、ナイフが宙に舞っている。


ランスが「ダンシング」等と呼ばれる理由、それは手を使わずにナイフを好きなように動かす事が出来るからだ。


今宙に浮いているナイフは、切っ先をこちらに向けている。


普段はこのナイフ達はランスの腰や足にあるホルダーへしまわれているのだが、こうして戦闘体勢に入る際は勝手に出てくるのだ。


「って、戦う気なのかよ」


「乙女を凌辱した罰だ。死ね!」


「死ぬわけにはいかないって」


素早く窓を開け、ナイフが来る前に飛び降りた。
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