勇者は僧侶のなんなのさ
#2 勇者と愉快なお仲間さ
「ただいまー」


ここはギルドの二階にある、個室。


個室とは言っても、あるのは机と椅子のみ。


使用する頻度も時間も少ないので、経費がかからないようにしてあるらしい。


まったく、この国は密偵をなんだと思っているのか。


小一時間問い詰めたい。


「おかえり」


椅子に座って本を読んだまま、シサが答えた。


金髪の頭の上に、司祭専用のティアラを乗っけている。


「今日は教会の仕事があったの?」


「いや、気分。今日は休む日だから」


「……そう」


だったら、人身売買の防止を手伝ってくれれば良いのに。


そんな怨みが篭った目を向けてみたが、シサは気が付かず、何も反応を見せない。


「…………はぁ」


思わずため息が出た。


「ため息をつくと運が逃げるわよ。吸いなさい。」


真面目な顔で本を読みながらそんな事を言うシサ。


釈然としないものを感じるが、とりあえず深呼吸してみた。


何となく肩の力が抜けたような気がするが、運が戻ってきたかは定かでない。


「それで、人身売買はどうなった?」


「防いだよ。ただ、ちょっと根が深そう」


シサはパタンと本を閉じて、赤い瞳をこちらに向けた。
< 6 / 78 >

この作品をシェア

pagetop