勇者は僧侶のなんなのさ
「え? あ! きゃぁぁぁ!!」


ランスの悲鳴が耳元で響く。


こんなに女の子らしい悲鳴をあげられるとは知らなかった。


目の前に地面が近づいて来る。


「よっと」


膝のクッションを上手に使って地面に軟着陸。


ストッと軽い音がしただけで、衝撃はほとんど無かった。


周囲に人はいないようで、この着陸に気がついた人もいないようである。


ランスの悲鳴を聞き付けた人もいなさそうだ。


当のランスは今、黙り込んでいる。


「ランス大丈夫?」


声をかけてみた。


しかし、反応は無い。


「じゃあ、シサの所へ行くよ」


「フェイ」


ランスのか細い声。


「どうしたの?」


「もう少し、このままで」


小さな声でランスは言った。


時間がある訳でも無いが、ランスの頼みを無下に断る訳にもいかない。


「降ろそうか?」


「いや、このままでいい」


ランスはそういってギュッと体を寄せてきた。


ランスの体が震えている。


今日はポカポカ陽気なので、寒いはずがない。


だとしたら、怖かったのだろうか。


普段のランスがああだから、何となく怖いもの無しというイメージだったが、そうでもないのかも知れない。
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