勇者は僧侶のなんなのさ
「もしかして、落ちるのとか苦手?」


聞いてみる。


しかし、ランスは反応を示さなかった。


その無反応が雄弁に肯定しているような気がする。


以後、気をつけよう。


「ふっふっふっふ」


いきなり笑い出したランス。


ついに頭のネジが外れたか。


いつか来るだろうとは思っていたものの、こんなに早く来るとは思っていなかった。


「まだまだだな、フェイよ」


「はぁ…………」


「まだ気づかないのか?」


「? …………! これは!」


見ると、木のうろの中だったり、窓のひさしの上だったり、象の手中等にナイフが配置されている。


その全てのナイフの切っ先はこちらへ向いていた。


そのナイフ達は微妙に震えている。


ごく自然に配置されていて気がつかなかったが、ランスのナイフだ。


四方を囲まれ、逃げ場がない。


「愚かだな、フェイよ。私が何の策もなしにこのギルドにいる訳がないだろう。時間稼ぎはこれまでだ」


そういって高笑いするランス。


「くそー…………」


逃げようにも逃げられないが、釈然としないものを感じた。


なんで騒ぎを起こさないようにした行為で怒られなければならないのか。
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