勇者は僧侶のなんなのさ
どうせやられるなら、全力でやってやる。


「ランスー」


「命乞いか? 許さん! 許さんぞ!」


「危ないから、口をゆっくりと閉じて。行くよ?」


持てる力全てを使い、走り出した。


それに反応したナイフが飛んできたが、その動きは見切っている。


前方から飛んで来る二本のナイフは、体をよじって突破。


左右から飛んできたナイフは跳躍し、そこに飛んできたナイフを蹴り払う。


着地したところを狙ってきたナイフの群れは、その中の一本を掴んで握り、全てたたき落とした。


あらかた落とし終えたところで、再び全力疾走。


攻撃を外したナイフが後ろから追撃して来るものの、スピードがまるで違う。


ドンドンその差を広げ、ついには見えなくなった。


今はもう家の手前まで来ていて、もうナイフの攻撃は追いつかない。


「ざっとこんなもんかな。ランスは無事かい?」


背負ったランスに聞くが、ランスは何も言わない。


「もう終わったから口を開いても良いよ。それにしても、こういう事はあまり感心しない。ギルド長らしく、もっと節操を持ちなさい、節操を」


「早過ぎだ、馬鹿」


ランスが小さい声で呟く。


そして、その小さな体を押し付けてきた。
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