魔界の恋模様
「…ああ、サラマンダーが消えるな。しっかり捕まっていろ」

私はその言葉に答えずに、
ただ、大魔王さんにしがみついた。

「──消えないで、」

思わず、そう呟いていた。

人の夢を壊さないで。
夢を、
見続けてよ─…!

その瞬間だった。

唐突に、足場が安定したのは。
…大魔王さんの。

「サラマンダーの風化が…とまった?」

「…?」

よく分からずにまた真下を伺い見た。

さっきまで消えていたはずの、
ドラゴンの羽が存在している。

「誰かが…夢を、見続けた?」

その言葉に、とまっていたはずの涙が再びあふれ出る。

誰かが、夢を持ち直した。

そのことがうれしくて、うれしくて…。

「…涙もろいな、お前」

大魔王さんの呆れた様な声が振ってくる。

普段から…!
こんなんじゃないよッ!





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