魔界の恋模様
それから数時間。

大魔王さんとの会話も弾んできた所で。

「見えた。あれが俺の城だ」

ついに、目的地についたらしい。
見れば、まさに絵本でしか見たことのないお城…の真っ黒バージョンがひっそりとたたずんでいた。
周りは森に囲まれていて、なんか不器用な鳴き声が聞こえてくる。

「あれが私の家か!」

「お前…騎士の元へ帰りたいとは思わんのか?」

「え?なんで?騎士とか一回も喋ったことないよ?」

そんなとこ戻っても…ね?

「まあ、騎士はお前を弥生姫だと思っているがな」

あ、なんかそれいつか聞いた。
きっと弥生姫がこの世界の姫だったんだろう。

あれ?じゃあ、弥生姫はどこに行ったの?

んー…?

「よし、降りるぞ」

「え?」

降りるぞ?

降りるぞ?

降りるぞ─…?

「きゃぁあぁああッ!」

落ちるぞの間違いじゃなくて!?

「煩い」

煩いじゃなくて!
落ちてますよ、大魔王さん!?

私達、雲の上くらいある高さから森の中に真っ逆様ですけど!?

しかもあの怖そうな森に!

「しょうがないだろう。サラマンダーが降りたら一大事だ」

一大事!?
私達も一大事ですっ!

「やだやだっ!怖い!」

思わず、大魔王さんを突き飛ばしていた。
あ、よけいに怖い!

急いで大魔王さんの元に手をのばすが。

辺りはもう夜。

闇み紛れて、大魔王さんの姿は見えない。






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