魔界の恋模様

先程から続く硬直状態。

なぜなら。

「降ろすぞ、苺」

「やっ!」

「…俺に中まで着いていけと?」

「やっ!」

こんな状態だからです。

さっきから何回くりかえしただろうか、この会話。

だって、
降りるとアレが来るし…。
中についてこられても…、物凄い困る。

トイレの前でこんなことを言い争っている私達は廊下をゆく使用人さん達には恐ろしくバカみたいに見えるんだよね、きっと。

「…そこまで俺と離れたくないのか」

「違っ!だって歩いたらまたさっきの奴が…」

ついに、思わず反論してしまった。
ポカン、とした表情を浮かべる大魔王さん。

「アレはあそこだけだ。初めての来訪者への単なるいたずらにすぎん」

…え?え?えっ!?
うそーっ!

ま、また早とちり…というか勘違いしたの!?
私!

降りてもなんにもないのに、私はプライドを捨ててまで大魔王さんに縋っていたってこと!?





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