魔界の恋模様
「大魔王さんー…」
「一体なんだ、さっきから…」
「お風呂まだ?」
「む…しまった。通り過ぎていたな」
…通り過ぎて?
うぉおぃ!
なにやってんだよ、大魔王さん!
「どれくらい?」
「お前が先程まで居た部屋…客間の二つ隣だ」
うぉおぉおおいっ!
と、遠すぎませんかっ!?
今きた道、引き返すんですか!
足が棒の様なんですけど。
棒どころか、今にも折れそうな小枝なんですけど。
「しかたがない。やむをえんな」
「え?」
大魔王さんが、目の前の壁に手をかざした。
するとすると。
壁がぐるぐると渦巻いて…。
ぽっかりと
黒い闇が渦巻く人一人が通れるくらいの穴ができた。
「入るぞ、苺」
「え?」
聞き間違いかな?
こんなヤバそうな穴に誰が進んで入るものか。
普通の人は絶対、百人が百人、そう言うよ。