魔界の恋模様
「レイス様!ああ、此処にいらしたのですね!朝起きたらお姿が見えなかったもので…」
女の人がレイスの元へと駆け込んできたのは。
息をきらしている所を見ると、必死で探してたんだな。
「すまないね、リーゼ」
レイスがそう…リーゼさんの耳元で囁いたのがこちらまで聞こえてきた。
…あ、クリスさん…。
すごく暗い表情…。
もしかして、このリーゼさんが…レイスのフィアンセ?
「大魔王様。お久しゅうございます。リーゼ=ローデンです」
わっ、絵になる…。
スカートの裾を持ち上げ、優雅に礼をするリーゼは本当にお姫様みたい。
「…」
完全無視な大魔王さん。
うっわぁ…、不機嫌を極めちゃってるよ、この人。
「そちらの方は…」
「…」
「あっ、苺ですっ!」
不機嫌な大魔王さんの代わりに答えた私。
「フィー!早く着替えをもってこい!」
ホントになにをイライラしてるんだか…。
そんなとき、ちらっと目に入った恐らく昨日の書類のうちの一枚。
そこには、大きく罰印が描かれていた。
…仕事、うまくいかなかったのかな。
「はいはい。では、こちらにいらしてください」
むすっとした表情のまま、大魔王さんはフィーさんの後へと着いていってしまった。
「わたくし、何か怒らせてしまったのかしら…」
あ、違うと思いますよ。
多分仕事がうまくいかなかっただけです。