魔界の恋模様
「ふーん。そんな風に思ってたんだ?」
にっこにこ笑顔のライス…いや、レイス。
じりじりと距離を詰めてくるレイスにじりじりと後ずさりする私。
そして一瞬の間を置いて。
「たーすーけーてー!」
「ははははは!待ちなよ~」
壮絶な追いかけっこが、その幕を開けた。
捕まったら確定死!
どうしよう、どうしよう!?
そして私の頭に真っ先に浮かんだ人物は…。
「クリスさん!」
…でも。
そこに行くには戻らなきゃ行けないワケで。
それに、今のクリスさんに頼るのはちょっと…。
「却下!」
右に曲がり。階段を駆け上がりながら、私は必死に思考を巡らせる。
他に!
「…フィー?」
大魔王さんは助けてくれるまで過程がありそうだし…。
フィーしか、いない!
階段を上り詰め私は再び右に曲がった。
それを真っ直ぐに走り、左に一回、右に一回曲がって…。
「あ、電気ついてるー!」
私は既に救われた気持ちになりながらその部屋に転がり込んだ。
…が、しかし。
「騒がしいな。苺か」
そこにあったのは大魔王さんの姿だけ。
「あ、…れ?フィーは?」
「買出しだ」
近づいてくる恐怖の足音。
もう、逃げ道はない…!
「ふむ…。ピンチの様だな。苺よ」
ニヤニヤと卑屈に笑う大魔王さんを前に、私は叫んだ。
「助けてください!大魔王様!」