ピアノ
拓斗のやつ、こんなときだけ素早いな…。
さぁて、僕はどうしよう?
病院の中やからもちろんケータイは使われへんしな。
…外で待つかぁ…
今日天気えぇしね。
僕は広い病院の中庭に出た。

中庭のベンチでポカポカひなたぼっこしてるうちに、拓斗が看護婦さんにフラれて戻ってくるやろ。
そう思いベンチに近づくとベンチに一人の女の子が寝ていた。
白のワンピースに淡いピンクのカーディガンを着ている女の子…。
あまりの綺麗さに妖精かと思った…。

僕は気が付くと僕は何かに引き付けられるようにその子が寝ているベンチに近づいていた。
今日は確かに暖かいけど…
この子随分薄着やな…
寒ないんかな?
僕は着ていたジャケットを脱いでそっと女の子に掛けた。

その瞬間女の子はパチッと目を開いて、僕を見つめた。

「……誰?」

それが僕が初めて聴いた彼女の第一声。
この時は彼女が僕の中であんなにも大きな存在になるだなんて思ってもみなかった。
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