ピアノ
「あ、ごめん!びっくりさせてもーた?」

その知らない男の子はそう言って私に笑かける。
…誰だろう?
このジャケットもこの人の物なんかな?
ここは、病院?
…私入院してるんだっけ?
もう頭の中がごちゃごちゃして全然整理できない。

「…僕のこと知らん?」

男の子はキラキラした太陽みたいな笑顔を私に向ける。

「知らない…」

「そっか。僕なぁ、中川博貴っていうねん」

「ふぅん…」

「君はなんてゆうの?」

私の、名前…
思い出せない…

「…わからない」

「え?!名前やで?」

「だから、わからない」

「あ!そうゆう病気?
やから入院してんの?」

やっぱり私病院にいるし入院してるんだよね?

「そう…かな?」

「そっかあ…大変やなぁ」

そう言って中川くんは私の手を握った。
ドクン…ドクン…
なにこれ…なんて表せばいいんだろう?
私の知らない、今までにない感情…

「あ!拓斗からメール…じゃあ頑張ってな!またお見舞い来るから!!」

中川くんは力強く言う。

「あ…コレ」

ジャケットを渡す。

「ほなね」

中川君はジャケットを受け取り私に手を振り、去っていった。
彼は何者なんやろう?
そしてあたしは、誰なんやろう?
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