ピアノ
「やっと見つけたぁっ♪」

いつものように中庭で本を読んでいたら中川君がやってきた。
ほんまに来たんや…

「ちゃんと僕のこと覚えとる?」

「…中川君」

「よしよし♪
記憶喪失治ったか?」

私は静かに首を横に振る。
相変わらず自分については何も分からないし、思い出せない。
周りの人も誰も教えてくれないし…

「そっかぁ…ってかなほんま探したわ~疲れたぁ~」

そう言いながら中川君はベンチに座る。

「なんでそこまでして私に…」

「会いたかってん…
好きやから」

「…………すき?」

「うん、さっき気付いた。
君が好きやねん」

…私のことを…好き?

「君は?僕のこと嫌い?」

「“好き"ってドキドキしたり…苦しかったり、なんか心があったかくなったりしますか?」

「うん、する」

「じゃあ私は…
中川君のこと好きです」

中川君は何にも言わずにニコッて笑うと私を抱き締めた。
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