風魔の如く~紅月の夜に~

 誰もいないと知りつつ、晶は恥ずかしくて顔が赤くなった。

(反対側に逃げてきたし、少し食べ物を買おうかな・・・)

 晶はセブンイ○ブンの自動ドアを潜る。

「いらっしゃいませ~」

 若い男性店員の爽やかな声が響く。見渡すが人が見当たらない。どうやら自分と店員だけらしい。
 晶は手早く、飲み物と少々の菓子、そしておにぎりを買うと、レジに向かう。
 レジに着くと、店員は慣れた手つきで会計をしていく。済むまで待っていると、晶は店内用の小さなのぼりが目に付いた。

寒い季節 セブンイレ○ンのアツアツおでん

 いつもは何にも無く流すのぼりだが、何故か今日だけは気になった。
 なんとなく、店員に卵、こんにゃくを頼み、コンビニを後にした。

「寒いな・・・」

 晶が外に出ると、コンビニに出るまでは気付かなかったが、冬のような寒さであった。
 道の数少ない電灯はチカチカと不安げに点滅する。

(早いとこ家に帰るか・・・あのミキとかいう奴に見つからないようにしないとな・・・・)

 そう思った時、晶は初めて自分が今、何処にいるのか分からないという事のを知った。あの時、ミキに、あまりに乱暴に連れて行かれたため、道を覚える余裕が無かったのだ。

 晶は思わず舌打ちをする。ここで、やたらと動き回ると迷う恐れがある。かと言って、このまま居れば、ミキに捕まるのは時間の問題であろう。暫く晶が考えていると、一つのアイディアが浮かんだ。
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