風魔の如く~紅月の夜に~
「・・・!」
そこには、あの化け物を超える者が待ち構えていた。
頭が四つ付いた身長三メートルはあろうかという狼が晶を睨んでいる。それぞれの頭は、窮屈そうに忙しなく蠢き、口からヨダレを垂らし、四つの頭はお互いを見ようとは決してせず、代わりに晶を琥珀色の眼で睨んでいて、その狼の上にはローブを着込んだ背の低い人が座っていた。
フードのせいで表情は伺えないが、ギラギラとした目で晶を見つめる。晶は、知る事が出来ない表情が薄っすらと笑っているように感じていた。にらみ合う事数分、敵が突如、口を開いた。
「見つけた・・・。お前が実験体2‐05が最後に報告した適格者か・・・。見た所、まだあいつ等には取られてないようだな・・・」
思っていたよりも澄んだ声であった。晶は怖くて震えそうな手を握り締める。
(ここで、下手をすれば、この化け物に喰われる・・・ここは慎重に)
「・・・お前は、何者なんだ?」
相手は、クスクスと笑う。
「何が可笑しい?」
「だって、お前、自分がどうして今、こうなっているのか知らないからさ・・・。『時の風』で教えてもらわなかったのか?可哀想に・・・それじゃあ、僕が教えてあげるよ。お前は、『式』という特別な武器を扱える力があるのさ」
「特別な力?」
「そう、『あちらとこちらを繋げ、あちらの武器を召喚する力』、通称式使いの力をね。僕は、その力のある『選ばれし者』を集めるのが仕事、だからお前は、追いかけまわされているわけさ」
「・・・式使いは、どんな武器を使えるんだ?」
「それは人によって変わる。だけど、戦車よりも強く、無限な最強の力だ。
さあ、僕に着いておいで、仲間になるなら悪いようにはしないよ?でも、もし断ったら・・・この状況で分かるよね?」
狼の化け物が唸りをあげる。その殺人に優れた牙は、晶の肉を欲するように剥き出しになる。晶には選択する権利が無いのだ。
(断れば殺すってか・・・)
晶が口を開きかけたその時である。
「待て!」
聞き覚えのある良く通る声がした。晶が声のした方に視線を移すと、そこにはミキの姿があった。
そこには、あの化け物を超える者が待ち構えていた。
頭が四つ付いた身長三メートルはあろうかという狼が晶を睨んでいる。それぞれの頭は、窮屈そうに忙しなく蠢き、口からヨダレを垂らし、四つの頭はお互いを見ようとは決してせず、代わりに晶を琥珀色の眼で睨んでいて、その狼の上にはローブを着込んだ背の低い人が座っていた。
フードのせいで表情は伺えないが、ギラギラとした目で晶を見つめる。晶は、知る事が出来ない表情が薄っすらと笑っているように感じていた。にらみ合う事数分、敵が突如、口を開いた。
「見つけた・・・。お前が実験体2‐05が最後に報告した適格者か・・・。見た所、まだあいつ等には取られてないようだな・・・」
思っていたよりも澄んだ声であった。晶は怖くて震えそうな手を握り締める。
(ここで、下手をすれば、この化け物に喰われる・・・ここは慎重に)
「・・・お前は、何者なんだ?」
相手は、クスクスと笑う。
「何が可笑しい?」
「だって、お前、自分がどうして今、こうなっているのか知らないからさ・・・。『時の風』で教えてもらわなかったのか?可哀想に・・・それじゃあ、僕が教えてあげるよ。お前は、『式』という特別な武器を扱える力があるのさ」
「特別な力?」
「そう、『あちらとこちらを繋げ、あちらの武器を召喚する力』、通称式使いの力をね。僕は、その力のある『選ばれし者』を集めるのが仕事、だからお前は、追いかけまわされているわけさ」
「・・・式使いは、どんな武器を使えるんだ?」
「それは人によって変わる。だけど、戦車よりも強く、無限な最強の力だ。
さあ、僕に着いておいで、仲間になるなら悪いようにはしないよ?でも、もし断ったら・・・この状況で分かるよね?」
狼の化け物が唸りをあげる。その殺人に優れた牙は、晶の肉を欲するように剥き出しになる。晶には選択する権利が無いのだ。
(断れば殺すってか・・・)
晶が口を開きかけたその時である。
「待て!」
聞き覚えのある良く通る声がした。晶が声のした方に視線を移すと、そこにはミキの姿があった。