風魔の如く~紅月の夜に~
「分かりました・・・。俺、式使いになります!」
「晶君!」
「時間がありません。どうしたら、俺の式を目覚めさせる事が出来るのか教えて下さい!」
「分かったよ。では・・・・」

 風を切る音が晶の耳に入る。
 晶は、全力でさっきの場所まで戻っていた。大きな箱を抱きしめるようにして走りながら、大樹の言った事を思い出す。

(『いいかい、箱の中には、君が選んだ武器と成る物・・・つまり、式が入ってる。どんな式かは、開けるまで誰にも分からない。そして、式は君が本当に戦いたいと思った時にだけ、姿形を見せ、力を貸してくれる。つまり、君が本当に戦いたいと願う相手の前でしか式は力を発揮しない。だから、この箱はその場に着くまで開けちゃ駄目だ。そして、着いたら箱を開ける。箱を開けると、式の名が頭に浮かぶから、心からその名を叫ぶんだ。そうすれば、式が現れる』)

 晶が最後の曲がり角を曲がると、そこには衣服が破れ、傷だらけになったミキがいた。
 フラフラとしていて、今にも倒れそうである。

「お前・・・・!」
「っ!何故来た・・・言ったはずだ。『ここに居られても邪魔になる』と、今からでも遅くない私が足止めをしている間に行くんだ!」

 ミキが叫んだその時である。

「何を言っているのかな?もはや、式と共に力が残っていないお前が、この僕とガルバームを、止められる訳ないじゃん♪それに・・・・」

 相手は、鋭い眼差しで晶を見つめた。

「戻ってきたと思ったらコイツ、式と契約してるしね。お前達、逃がす訳にはいかないんだよね~♪だから・・・」

 突如、相手から息が出来ない程の殺気が溢れ出す。

「死ね♪まあ、女の方はどうせ逃げられないし、お前、来いよ・・・」

 晶の手に力が入る。

(今しか無い!)

 晶は素早く箱を開く。すると、そこには、長細い60cm程の金属製と思われる銀色の棒が収められていた。途端に晶の頭を言葉が過ぎる。

(壊疽ノ剣 葉菊)

 晶は、その名を声の限りに叫んだ。

「葉菊!」

すると、先程まで銀色の棒であった物が、まるで生きているかのように弾けて、晶の手に納まり、柄に菊があしらわれたスラリとした刀に姿を変えた。たちまち、異様な存在感が刀から放たれる。
< 16 / 64 >

この作品をシェア

pagetop