風魔の如く~紅月の夜に~
始まりなる全て
秋・・・それは、多くの人々にとって、身の回りの環境が変化していく季節である。
好きだった番組が終わる。気になる人が出来る。新しい環境に慣れて居心地が良くなる等等、人によって様々ではあるが、何かしらの変化が有るものである。そして、それは本作の主人公にとっても例外ではなかった・・・
「あ~、いよいよ今年も、後半か~・・・」
虹ヶ丘高校二年、神野晶(17)は、秋空を見上げながら、しみじみと言った。
ここは私立虹ヶ丘高校の屋上、今は昼休みである。
晶が暫く、ボーっとしていると、横から声がした。
「何、言ってんの。それが、ここで毎日、季節を感じてた人の言う事?」
晶が起き上がると、そこには、パンを持って立つ、少し童顔な女の子がいた。
「なんだ、桜井か・・・」
「何だとは失礼ね~」
そう、少し不満そうに言うと、桜井杏子(16)は女子らしく、床のホコリを掃い、横に座った。晶と杏子は、中学生からの同級生である。この杏子、顔は中々なのだが、持ち前の男気ある行動のせいで、クラスの男性陣からの人気はからっきしだが、女性陣からの人気は、かなりのものである。しかしながら、マイペースで『女、男は関係ない』をモットーにしている晶にとっては、気軽に付き合える友人である。