風魔の如く~紅月の夜に~
晶たちは、屋敷の外に出ていた。ビュウビュウと、四人の頬を、秋風が撫でる。
「寒い・・・」
ぽつりと、キサが口にした。確かに、秋風は冷たく、冬と錯覚させる程である。
現に、ミキと晶は、各々に、自分の手を擦り合わせていた。
しかし、そんな三人を尻目に、一人だけ平気そうにしている人間がいた。葵である。
思わず、晶は葵に訊く。
「葵さん・・・寒くないんですか?」
すると、暫く考え込むと、葵は笑いながら答えた。
「まあ、寒いと言えば寒いかもね・・・」
「それじゃあ、もう少し厚着して、それからにしません?」
すると、葵は「なんて事言うの!」と言わんばかりに晶を叱り付けた。
「いい晶?貴方は今日入ったばかりだから、分からないかもしれないけど、こうしている間にも、襲われている人がいるかも知れないの。厚着なんかしている暇なんて無いわ!」
確かに、葵の言う事は一理ある。こうしている間にも、襲われている人がいるかもしれない。晶は葵の意見をもっともだと思った。しかし、次の瞬間、ある疑問が晶の頭に浮かんだ。
「でも、『知恵の実』は、仲間を増やしたいんですよね?だったら、危険とかは無いんじゃないんですか?」
「・・・それ、違う」
ぽつりとキサが、呟くように言った。
それに続き、葵が晶に深刻そうに注意する。