風魔の如く~紅月の夜に~
晶とミキは、葵達とは逆の方向となる道を歩いていた。
時刻は、もう十一時、あと一時間で正午である。しかし、ミキは黙っており、晶もいざ二人だけとなると声を掛けづらく、沈黙していた。
(う~ん。なんとか、この気まず~い雰囲気を打破しなくては・・・・)
そうは思ってみるものの、晶がいくら頭を捻ってみても、いい案はなかなか浮かばなかった。なにしろ、晶にとってミキの第一印象は鋭い目をした堅い人、晶は今まで、そういう感じの人と話をした事がなかったので、どう言う話題を話したら良いものかわからない。
無論、晶の身の回りに、そういう人がいなかった訳ではない。しかし、晶は今まで、そういう人とこういう状況になった事はないし、なるようにした事もない。
晶は、自分の判断ミスを呪った。
(こんな事になるなら、葵さんか、キサさんにするんだった・・・いや、でもキサさんはダメか。寡黙だから多分、今と同じ状況になっていただろうからな。ミキは、一番話してるから、気を楽に持てるかと思ったんだけどな・・・)
晶が、そんな今考えても、どうしようもない事を思っていると、意外にもミキの方から話し掛けてきた。
「・・・きっと、お前は私の事を笑っているのだろうな」
「えっ?そんな事は無いけど・・・」
「隠さなくてもいいさ・・・」
(ほ、本当に笑ってないんだけどな~・・・)
すると、ミキはいきなり晶に向き合った。
ミキの鋭い眼差しが晶の目を捉える。
(や、やっぱり、怖い~)