風魔の如く~紅月の夜に~
―月曜(朝)―
「う、う~ん?」
晶は、目を覚ました。今日から月曜、学校がある。
「朝か。ハア・・・」
思わず晶の口から溜息が漏れる。それには、当然の事ながら理由があった。
今日、学校に行ったら杏子に、小屋がどうであったか聞かれるのは、目に見えているからだ。そして、晶はそれに答えなければならないだろう。
ここで、晶は式使いになったのだから、人を巻き込む可能性があるので、学校に行けないのでは?という疑問が生まれる。
しかし、その心配は、既に解消されていた。
何故なら、大樹が、「学校ぐらいならいいんじゃない?」と、学校にこれからも通い続ける事を認めてくれたからである。
その代わり、毎週土曜に見回りをする事と、学校生活でも、モムンクルスに警戒を払い、いた場合は倒すという条件付き・・・
晶は、何気なく自分の部屋のテレビをつける。晶がここに暮らし始めて早二日、早くもこの生活に慣れていた。これは、晶特有のマイペースのおかげであるのだろう。
ついたテレビは、丁度良くニュースであった。晶は、それを確認すると、着替えを始める。
この屋敷は、部屋は一人一人に有るものの、食事は全員でとる事になっていると、大樹に教えられたからである。
晶が着替えを続けていると、耳にニュースの一部が聞こえてきた。
『・・・・なお、日本政府はアメリカ軍と協力して、この問題の解決に当たるという事です。
次のニュースです。今日未明、長野県如町で、死体が発見されました。
身分証明書などから、警察勤務の田中健さん(41)だと思われ、田中健さんは昨日の見回りから、派出所に戻っておらず、派出所近くの家々では、「男の叫び声が聞こえた」などの証言が有る事から、事件、事故の両方で捜査をして行くとの事です・・・』
(如町って言えば、隣町だったな・・・)
晶は隣町について思い出した。閑散とした過疎化の進む町で、確か町に一軒だけコンビニが在るだけの町だったはずだ。
それに、町人達は人見知りが激しく、コンビニの店員でさえも、接客をしないほどだった。
しかし、殺人などという物騒な事が起きそうもない町である。晶はどうも、そこに引っかかったが、深く考える時間はなかった。
トントンッ
軽く扉を叩く音がする。