風魔の如く~紅月の夜に~
「誰だ?」
晶がそう訊くと、子供らしい可愛い声がオドオドと答えた。
「ぼ、僕、ヨウ・・・」
「ああ、どうしたんだ?」
晶がヨウが来た事に内心驚いていると、扉の向こうのヨウは一向にオドオドとしたまま答える。
「う、うん・・・。ミキお姉ちゃんが早く起きるようにって・・・」
「ああ、分かった。ありがとうなヨウ。」
晶はそう言うと、急いで支度し、部屋を出た。
すると、さっきから三分ぐらいは経つのに、まだヨウがいた。
「どうしたんだ?先に行ってても良かったのに・・・」
「ううん。そうじゃないの・・・一人で行くのがヤダくって」
「ふ~ん・・・んじゃあ、一緒に行くか?」
「うん!」
元気良く返事をすると、ヨウは晶を引っ張るようにして食堂に連れて行く。
「わわ!そんなに引っ張らなくても良いって・・・」
やがて、二人が食堂に着くと、すでに二人以外は全員揃っていた。
(もしかして、皆、俺を待ってたのかな・・・?)
それならば、さっきヨウが引っ張った理由も分かる。晶は、少し申し訳ない気持ちになった。
晶が席に着くと、食事が始まった。
今日の朝のメニューは、玉子焼きにアサリの味噌汁と、焼き鮭に、ご飯という朝のお腹にとっては嬉しい献立である。ちなみに、食事作りは当番制で、今日はミキの番であった。
晶が、味噌汁を飲んでいると、朝の会話が始まる。
先陣を切ったのは、子供らしいというか、カイであった。
「ねえねえ大樹。」
カイはそう言いながら、焼き鮭の骨を器用に取り除いていく。そして、鮭の骨が取り終わった頃に、大樹は玉子焼きにソースとタバスコをかけながら答えた。
「何?」