風魔の如く~紅月の夜に~
闇の宴
ジュージュー…
朝のキッチンに調理の音が軽快に聞こえる。
しかし、その音とは裏腹に、今日の天気は曇り、そして晶の気分も曇りであった。
それには三つの理由がある。
①今日は自分が料理する番で、面倒である。
②昨日、授業で蛇王から大量のプリントが配られたせいで、寝不足である。
③朝のニュースの内容
しかし、そんな晶の気分は、料理には現われる事は今の所なく、焼いている鶏肉はジュージューと美味しそうな音をたてる。
「よっと」
晶が鶏肉を箸でひっくり返すと、キツネ色に見事に焼けた表皮が現れた。
最近まで一人暮らしをしていたので、実は晶はそこそこ料理が出来る。
しかし、さすがに七人分を作るとなると、疲れてきた。晶は、焼けた鶏肉を皿に盛ると、一息ついた。すると、今日のニュースの内容を思い出した。
また隣町で殺人事件が起きたのである。しかも今度は大量にだ。
第一発見者は靴屋の店主。朝、商店街にある店を開けに行くと、店の前に赤いペースト状の物が落ちていたそうだ。
最初は、最近多い生ゴミの不法投棄かと思ったそうだが、その紅い中に、人間のものと思わしき頭部が転がっていた事から、警察に通報。
そして、それだけではなく別の場所でも起きたのだ。
現場は民家。朝、新聞配達に来た青年が、家の玄関に無造作に転がった人間の腕を見つけ、警察に通報、後に家の中に入った警察官が家族全員、四人の死体を発見。何故か一人だけ頭部が発見されなかったそうだが、靴屋の前の肉片に埋もれて発見されたそうだ。
警察は、この二件の殺人を前日の殺人事件の犯人と関係が有るものとして、捜査を続けているらしい…
当然、ニュースではここまで詳しくは述べられてはいるはずはない。
では、どうして晶が詳しく内容を知るに至ったか?それは、今朝の出来事にあった。