風魔の如く~紅月の夜に~
夜の暗い街に、白い吐息がポツポツと浮かんでは消える。
ミキは、その出ては消えていく自分の吐息を少し見ると、少しでも暖かくならないものかと、かじかむ両手を擦り合わせた。しかし、あまり効果がないとは分かってはいたが、期待以上に暖かくならない。ミキは一人、寂しく溜息をついた。
時刻は大体十時、ミキが晶達と別れて約三十分経つ。季節の流れはミキの予想以上に速く、もうすっかり冬という感じである。
(まあ、無理も無いか…もう、十二月だもんな。
十二月と言えば紅白歌合戦、雪、クリスマス…ああ、こんなイベントいっぱいの月なのに、『知恵の実』のせいで犠牲者は先月以上に出てる。
あいつ等も、『知恵の実』っていう聖書に出ているような単語を使ってるなら、クリスマスのある月ぐらい、大人しくしてもらいたいものだな。
まあ、そんなの無理だろうがな…はあ、それにしても今日は寒い。明日は雪かな~?)
ミキがそんな事を考えながら見回りをしていると、ギクシャクと動く影が見えた。
(怪しいな…人間にしては形が人工的すぎるし、動きがギクシャクしすぎている。追ってみるか)
こうして、ミキの影追跡が始まった。
影は、街中を抜け、裏道を幾つも通っていく。途中で、何度もミキは見失いそうになった。
なんとか、ミキがその影を追跡しきると、影は公園へと消えていった。
(公園?なんで、こんな所に…?)
ミキが、そう思いながらも公園の敷地内に入ると、さっきまで追っていた影が消えていた。
「そ、そんな馬鹿な!?一体何処に?」
思わずミキが声を出すと、それにつられるように他の場所からも声が聞こえた。
その声は、聞いた事のある幼い声であった。ミキが声のした方に行くと、茂みに隠れるようにしてヨウ、カイがいた。