風魔の如く~紅月の夜に~
「クソッ!いつの間にこんなに…」
「ヤバイ!もう、キサが…!」

 ミキがキサのいた所を見ると、キサがいたはずの所には、人形で固まった塚のようなものが出来ていた。塚は身動き一つしない。

(このままじゃ、私達もああなるのか?)

 ミキが答えずに、そんな事を考えていると、闇夜の黒薔薇は、勝手に話を続けた。
 どうやら、元から答えは期待していなかったらしい。

「…それはな、この世が狂っているからだ」
「狂ってる?」
「そう、狂っている。この世は、親が子を虐待し、自分の優越感を満たす者がいる。
 そして、親を殺す子供もいる。あるいは、食糧難で死に行く者もいる。
 それを我等は知っているにもかかわらず、今起きているにもかかわらず、手を貸す事も、助け出す事も全ての者には出来ない…こんな世界が正常だと思うか?
 力が在っても意味がない世界など、狂ってるとしか言えない。だから、こんなに悲しい怨念の人形達がこんなにも産まれ出る。」
「だから、なんなんだ?」
「…だから、邪魔なお前たちは消す!」

 次の瞬間、一気に人形達はミキ達を飲み込む。一分後には、公園に六つの人型の塚が出来上がっていた。
 それを確認すると、闇夜の黒薔薇と名乗っていた滝沢は、木の上から降り、塚に近付く。

「…」

 暫く、見ると、その塚を崩し始めた。キサ達の時とは違い、ボロボロとすんなり崩れていく。やがて、塚から六人全員が取り出される。

「すまない。ここで、お前たちには全てが終わるまで寝ていてもらう。出来るだけ死者は私も出したくないからな」

 そう言うと、滝沢は歩き出した。

(…まだ仕事は終わってない。役立たずは始末する決まりがあるからな…残った一人の式使いは、大丈夫だろうか?出来るだけ、血は見たくない)

 滝沢は、歩く速さを速めた。
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