風魔の如く~紅月の夜に~

ポタッ・・・ポタポタ・・・

 紅い血がアスファルトの地面に数滴落ちた。
 晶は、その数滴落ちた血を見ると、自分の頬が暑くなっている事に気付く。
 血は自分の頬から出ていたのだ。

(今の一瞬で何が起きたんだ?それにコイツ、この前の・・・)

 晶は自分の正面を睨みつける。視線の先には、フードを被った子供くらいの小ささの人間と、それに寄り添うようにして、こちらを睨みつけ、長い舌を出し入れしている大蛇がいた。

「お前、どうして・・・」

 晶がそこまで言うと、フードを被ったアイツが、クスクスと笑い出した。

「愚問だよ。僕は闇使い、本部の命令に従っているだけ・・・そう、従うしかない!」

 そう言うと、意味の分からない事を言いながら今度は取り乱し始める。

(こいつ、狂ってやがる・・・。いや、それよりも問題はコイツの横のヤツか・・・)

 そう、今の晶にとっての一番の問題は蛇だった。先程から、どんなにフードの奴が取り乱そうと、横の蛇だけは晶から視線を外さず、射抜くような目で見てきているのである。

(おそらく、あれはアイツの式だ。しかし俺は今、式が召喚できていない状況にある・・・。これだけでもかなり不利だが、かといって召喚しようとすれば、さっきの目にも見えないような攻撃が襲ってくるのは確実・・・。一体どうするか)

 晶がこんな事を考えていると、相手はいつの間にか冷静に戻っていた。

「まあいい。ここでお前を倒せば僕は、今までのように出来るんだ・・・さあ、さっさとお前の式を召喚しろ!この僕がお前ごと消してやる!」
「えっ?」
「だから、さっさと召喚しろ!そうじゃないとフェアーじゃないだろ?」

 晶は自分の耳を疑った。先程、不意打ちをしてきた奴がフェアーを語り、その上自分に塩を送ってきたのだ。こんな事、普通ならしないというものだが・・・晶は、ひとまず相手の言葉に甘える事にする。
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