風魔の如く~紅月の夜に~
『今宵の宴は楽しいものだった。何が楽しかったか?それは愚問というものだ。
ダンスでもなく、談話でもない。我らが憂い、溺れたのは血のワインと狂喜、それと食べた食事のみ。血のワインは悲鳴と共に味わい、獲物の肉は狂喜を覚えて口にした。
人はただ、狩人と争い、宴を盛り上げ、明日の朝に全てに気付き、震え上がるだろう。
我ら狼は次の時まで、この日の狂喜を糧に生きていき、人込みに隠れる・・・・人間達よ今宵の事は全て忘れるが良い。知らぬ事こそ真の幸せなのだから・・・』
歌を歌っている者は、ここまで歌うと窓から家に入り、晶をそっとベッドに寝かせる。
実に安らかな寝顔である。それを見ると、フッと笑った。
そして、次に自分の服を見る。紅くテラテラと、月光を受けて不気味に鮮血が光っていた。
「全て、夢だといいのにな・・・」
それだけ言うと、その者は窓から夜空へと消えて行った・・・