第2ボタン〈短〉
「直也なんて―?」

「なんか今ツレとおるらしいからツレと別れたら合流するって」

ツレって、うわさの彼女やろか…?
駿の言葉を聞きながらそんなことをボーッと考えていた。
別にそんなんあたしに関係ないのに…

―二年前―

「なぁ、俺ら…友達に戻へんか?」

卒業式を目前に控えた三月。
桜の花びらが舞う中、直也にそう言われたのを覚えてる。

「うん、ええよ別に」

元々軽いノリで付き合い始めたあたし達。
付き合い始めても二人でいる時間より四人でいる時間の方が多くて、恋人らしいことも特にしていなかった。

「やっぱ、そんなもんやったんや…」

直也があたしに聞き取れないぐらいの小さい声で何か呟いた。

「え…?」

「なんでもない、ほなな!」

直也はあたしに背を向け走っていく。
この時は別れをなんとも思っていなかった。

―卒業式―

「直也―!写真撮ろうや!」

そう言って駿に肩を組まれた直也の学ランに目をやると、その第2ボタンはなかった。
それを見た瞬間あたしの心はぎゅうって押し潰されそうになった。

「由美、泣いてるん?!」

健があたしの顔を覗き込んできた。

「感動してん」

「キャラちゃうやん」

「うるさいっ!」
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