I -私-
「私・・??」



ニクイ、そう言っていた声は彩子ちゃんではなくまぎれもなく私の声だった。



私は、焦点が合わない目で美月に近づく。



私の手には、ナイフが握られていた。



「沙羅・・・??まさか刺さないよね??」



「・・・・・・・・。」



私は無言だった。




何も言わない。



自分でも自分が恐ろしく思えるような冷たくて表情のない顔だった。



「沙羅っ!!!!!!!」




美月がそう叫んだ瞬間、私が勢いよくナイフを振りかざす。



グサッ



ナイフが、静かに美月の体に埋め込まれる。



殺人現場を目の前で見ているような気分で気持ちが悪かった。



被害者は、親友の美月。



加害者は、私。



美月が倒れる瞬間、美月の頬には涙が伝った。
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