I -私-
私の呼ぶ声で、沙羅は振り向く。



沙羅の目は、恐ろしい位穏やかだった。



今まさに、死のうとしている人の顔ではない。



「・・・美月。どうしたの??そんなに急いで。」



沙羅は、きょとんとした顔で私を見つめる。



「沙羅!!何で、そんなとこいるの??危ないよ!!こっちに来て!」



精一杯叫ぶ。


沙羅の体いつ、フェンスの向こう側に消えてもおかしくない状況。



「・・・危ない??どこが??」



不思議そうな顔をして言う。



その顔から、全くの邪気は感じられなかった。



「だって、ここ屋上だよ!!そんなところいたら落ちちゃうよ!!落ちたら・・・死んじゃうよ!!!」




「・・・美月、なら私はここにいてもいいんだよ。私は、今から死ぬつもりだから。」



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