I -私-
沙羅は、最後のあの瞬間、私を突き落とさず、自分を突き落とした。


自分を突き落としたという表現はおかしいかもしれないが、私にはそう見えた。



「沙羅っ!!」


私が、そう叫んだ瞬間、沙羅は天使のように微笑んでいた。



多くの人を傷つけ、殺した犯罪者である沙羅。



そんな人に天使のように微笑むというのは、いささか間違っているように感じるかもしれないが、確かに沙羅はあの時、誰もよりも優しく、そして殺人狂に見えない微笑みだった。


最後に、屋上から飛び降りた沙羅は、正気であった。



私は、自分を殺す事で、罪を償えるなんて思わない。


でも、沙羅は、自分で自分を殺し、罪を背負い旅立っていった。



人はいうかもしれない。


死んで罪から逃げたと。


罪を償わずに逃げたと。


でも、私は信じてる。


沙羅は、罪を償うために、罪を背負ったまま死んでいったと・・・



現世で自分が生きる事自体罪だと感じ、そして自分を殺したのだと。




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