I -私-
人の噂も75日。



まさにその言葉が合う出来事であった。



さすがに75日で忘れられたわけではないが、今ではあまり思い出されることはない。



でも、沙羅に殺されたり遺族の方たち、傷つけられた人は、一生忘れない。


忘れることができない。



そして、私もこの事件を一生忘れない。



でも、忘れないことが大切なんだと思う。



苦しかったこと、悲しかったこと、憤りを感じたこと。



この事件で感じた痛みを忘れずに生きていくで私は一歩一歩前へ進める。



「じゃあ、美月ちゃん。また何かあったら連絡してね。」



「はい。また。」



そう言うと武さんは去って行った。



きっと、来年も、再来年もまたここで会うことになるだろう。



だって、私達がこの事件を忘れることは有り得ないから。


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