Dragon Fang
そういえば、泣いていなかった。
思い出したら涙が溢れてくる。
「…お兄ちゃん。」
一頻り泣いて、頭がぼーっとしてきた。
「ん?」
「あたし、ずっと前バイク借りて壊した事なかった?」
…口から出たのは、今はどうでも良いような会話だったけど。
「あぁ、あった。」
「なんで壊したんだっけ?お兄ちゃん、怒った?」
羽瑠はあたしを見て、呆れた顔をする。
「全て忘れた訳かよ。
お前が遊びかなんかで、堤防から海に突っ込んだんだろ?んで、バイクはダメになるわ、お前は死にそうになるわ…で大変だったんだぜ?」
…なんと。
「そうだったんだ。」
記憶がまったくない。