Dragon Fang
余裕の笑みなのか、タキは笑顔で良壱を見る。
「昔から良壱は、自分からぶつかる事が少ないなって思ったから。」
「喧嘩売ってんのか?」
「売ってる。」
普段は冷静な良壱が、あたしから手を離した。
そしてタキに近づく。
「…俺は東街では、過去の人間だ。今は北街が俺の居場所になってる。」
怒る訳でもなく、淡々と言葉を紡ぐ。
あたしはただ、見ている事しかしなかった。
「俺は帰らない。」
その言葉が理科室内に響く。
優しさがこもっていない冷たい声。
タキの願いを打ち切る声。