Dragon Fang
泣かなかった。
泣けなかった。
一番辛いのは、お母さんなんだと分かっているから。
周りがどう思おうと、本人が一番辛い。
その証拠に、あたしを受け止めたお母さんの肩が震えていた。
どうして今までお母さんを支えてあげられなかったんだろう?
今更の後悔は、声にもならず心の奥へ消える。
「…羽瑠の彼女、可愛かった?」
いつもの通り、場違いな質問が口から飛び出る。
「可愛かった。初めはいないって言ってたんだけどね?渋々連れてきたの。」
やはり、いるらしい。
あたしには「誰だソレ」なんて、すっとぼけていたくせに。