Dragon Fang
桜が散り、もう紫陽花が咲いていた。
夏弥は校庭の隅に植わっている花壇の紫陽花を見ながら、目を細める。
あたしも青い紫陽花を見ていた。
「………那瑠。」
「何。」
視線を逸らさず、声だけで返す。
「…もし、今回の件で。頭脳が必要になったら、頼るかもしれない。」
その言葉に頭を起こした。
夏弥は、俯くように机の上を見る。
何もない机の上を。
あたしは、にっこりと笑う。
今更、だ。
散々関係ないだのと言って。
「…夏弥。」
夏弥はゆっくりとこっちに視線を向ける。