Dragon Fang

意味もなく、廊下の窓の外を見た。

梅雨時だからか雨が毎日のように降っている。

あの時の良壱に、あたしは素直に「分かった。」と頷いた。

そして、今日も良壱は午前の途中で抜けてしまった。

意味もなくみた窓の外には、体育館の…タキがいた場所が見える。

だけど、人はいなかった。

タキもそれを囲んでいるようにしていた男子も。

いつも無視していたのに毎回懲りる事なく手を振っていたタキ。

…そりゃ、あれだけ無視すれば愛想も尽きてしまったのかもしれない。

無視したのはあたしなのに、少し寂しい想いを抱きながら、窓の外から視線を外す。

前を向いて歩こうとしたその先には、

「よ、ナルちゃん。」

と甘い笑みを浮かべたタキが立っていた。





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