Dragon Fang
『何故、敵対しなくてはならないのか』
そんな問題、あげる事自体が綺麗事だ。
あたしは、綺麗事を言おうとした。
でもタキは、こう呟く。
「もし僕が総長やってなかったら。」
…あたしより綺麗事を言った。
「この手は、まだ綺麗なままだったのか?」
『俺』が『僕』に変わっている。
タキは寂しそうな目で、自分の手を見つめていた。
「…ナルちゃんは、考えた事ある?」
「何を?」
あたしは返した。
「今までどれくらいの人を傷つけてきたのか。」
どこか切なげなタキの瞳は自分の手から離さなかった。